【ライフキャリアとは?】キャリア支援が求められている理由と必要性

自分らしく生きるため、
ライフキャリアを考えることと、その支援が注目されています。

「ライフキャリアを考えるって、どういうこと?」「そもそも、ライフキャリアとは?」「ライフキャリア支援って何をするの?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

なぜ、ライフキャリアが注目され、支援が必要だと言われているのか、ライフキャリアを考えるとどのようなメリットがあるのか、についてお伝えします。

 
nanami
ライフキャリアを考えたことがないという方は、よろしければこの機会に取り組んでみてくださいね

ライフキャリアの意味

ライフキャリアとは、個人が生涯にわたって果たす役割や経験の積み重ねをいいます。
その人の足跡ともいえるものです。

役割とは?

「役割」とは、子ども・学生・家庭人・余暇人(趣味・自分の好きなことを楽しむ人)・市民(地域活動「村民、町民、市民、県民なども含む」・ボランティアをしている人)・労働者・その他のさまざまな役割(年金生活者、余生を過ごす人)などです。

これは、アメリカの心理学者ドナルド・E・スーパーが提唱した理論「ライフ・キャリア・レインボー」において、多くの人が人生を通じて経験する共通した役割として挙げたものです。

このコラムをご覧になっている皆さんも、
何らかの役割を持って日々を過ごしているわけですね。

これらの役割は、1つではなく、いくつかが重なっていて、相互に影響し合っています。役割の内容は成長にともなって変化するものもあり、役割数も個々人によって増えたり減ったりします。

たとえば、このような感じです。

山田はなさん(18歳)の役割を以下とします
娘、高校生、陸上部部員、進学塾の生徒、某アイドルグループのファン、〇〇市民

はなさんの現在の役割です。

山田はなさん(31歳)の役割
娘、妻、花屋の店員、フラワースクールの生徒、スイーツの食べ歩き、旅行、△△市民

以下は、はなさんの現在の役割をスーパーが定義した役割に当てはめた表です。

はなさんの
現在の役割
 娘 花屋の店員


フラワースクール
の生徒

デザートの食べ歩き 映画鑑賞 △△市民
スーパーの役割 子ども
(両親が生きている限り、親に対しての役割が続く)
家庭人
(結婚したことで増えた役割)
労働者
(社会人になって「働く」役割が増えた)
学生
(義務教育・高校・大学だけでなく、社会人になってからの学びも含む)
余暇人
(趣味を)楽しむ人
余暇人 市民
(〇〇市から△△市へ移動)

こうした役割を知ることは、自分の経験や価値観を知り、役割のバランスや、やりたいことを明確にするために必要なことだからです

役割を知ることで、わかること

・今、自分が持っている役割の種類と数
・自分の好み、経験してきたこと
・それぞれの役割の割合の大小が把握できる
(たとえば、今、はなさんの役割の中で時間的に大きな割合を占めているものは「労働者」「家庭人」です。
その割合は、自分にとってバランスが取れているのかどうか、自分らしく生活していけるのかなどを考える目安です)

「仕事と生活の調和」を目指すことを「ワーク・ライフ・バランス」といいます。

キャリアには「ライフキャリア」と「ワークキャリア」がある

キャリアについて、もう少し詳しくお話ししていきます。

「キャリア」という言葉は、一般的に仕事や経歴、出世など職業に関する意味で使われていますが、もう1つの意味があります。

キャリアには、狭い意味での「職業・技能上の経験や経歴」「個人の人生と生き方そのもの」という広い概念があります。

わかりやすく図で表します(図1 ライフキャリアとワークキャリア)

  • キャリアには、「ライフキャリア(生涯のキャリア)」「ワークキャリア(職業人生上のキャリア)」の2つがあります。
  • 働くこと(work)は、人生の中の1つの役割です。(1つの役割とはいえ、workは人生の大部分を占め、生き方に大きな影響を及ぼします)
  • このワークキャリアとライフキャリアの役割は、相互に影響し合っています

図1 ライフキャリアとワークキャリア (made by creative nanami) 

「役割が相互に影響し合っている」とは?

私たちは何のために働いているのかというと、よりよい人生を送るためですね。
よりよい人生のために働いているのです。
ワークキャリアとライフキャリアは、どちらも必要なもので、お互いに影響し合っているということですね。

ワークキャリアとライフキャリが相互に影響し合っている状態を、
前述の「山田はなさん31歳」を例にして説明します。

はなさんは、生花デザイナーを目指してフラワースクールに通っています。花屋の仕事はパートですが、生花デザイナーになるための勉強にもなり、花が好きなのでやりがいを感じています。働くことで収入を得ているため、夫に気兼ねもなく大好きなスイーツの食べ歩きを楽しむこともできます。たくさん旅行にも行けるように貯蓄もしたいので働き続けていきたいと思っています。

ワークキャリア


花屋の店員

相互に影響し合っている

ライフキャリア

フラワーアレンジメント教室の生徒
スイーツの食べ歩き
旅行

この場合は、はなさんのワークキャリアとライフキャリアは、良い影響を及ぼし合っているということですね。

私たちは、働くだけではなく日常生活や地域活動など、人生のそれぞれの時期に、さまざまな役割を果たしながら自分のキャリアを積み上げています。

そして、役割は、多いほど人生が豊かになるといわれています。

ただし多数の役割は、ときとして過度な負担にもなるため、気をつけなければなりません。
ワーク・ライフ・バランスが大切なのですね。

【まとめ】ライフキャリアとは

  • 働くこと、家庭生活、地域社会とのかかわり、趣味などの余暇活動といった、生涯にわたり果たす役割や経験の積み重ねがライフキャリア
  • 自分の役割を知ることは、よりよいライフキャリアを実現するための一歩
  • ライフキャリアを考えるということは、仕事も含めた自分の人生を考えること
 
nanami
ここで、自分のライフキャリアを考えるためのワークをやってみましょう。
ワークをやらない方は、とばしてお読みくださいね。
ワークに取り組む方は、メモ用紙と筆記用具を用意して始めてください。
ワーク1.自分の役割を知る
このワークでわかること
 自分の役割を把握できる。頭で漠然と思っていたことを書き出すことで、自分の役割が変化したこと、やりたくなかった役割、やりたい役割が明確になる。

■過去・現在・未来の役割を書き出してみましょう(なるべく多く書きましょう)
以下のように、<過去・現在・未来> の枠を作って書き入れてください。

◆書き方の順番  現在 → 過去 → 未来 の順で書いてみましょう。
(書く順番の決まりはありませんが、今を基準に書いたほうが書きやすいです)
・現在の役割 ― 今、自分が携わっていることを書き出します。
・過去の役割 ― 過去から現在までやってきた役割を書きます。
         今と比べたい時代の役割を書いてもよいです。
(例)子どもの頃、学生時代、働く前、結婚する前、出産する前、外国にいた頃など
・未来の役割 ― 将来こうなりたいと思う役割を書きます。
(1年後、5年後、10年後など、自分がなりたい未来を設定して書きます)

◆役割の書き方例
子ども、高校生、大学生、生徒会長、販売員、看護師、係長、課長、主婦、母親、妻、テニス部員、
ヨガサークルのメンバー、クッキングスクールの生徒、ピアノを弾く、愛犬と遊ぶ、自治会の役員 
手話のボランティア要員、社内の危機管理委員、PTA副会長、絵本の読み聞かせ、家事など

■書き出した用紙を見てみましょう
・役割の中で、過去から現在まで続いているものはありますか。
・好きだった役割、嫌だった役割はありますか。
・やりたいこと、あきらめたことは何でしょう。
・未来の枠に書いた「やりたいこと」は、どうしてそう思ったのですか。
・書き出した役割は、下記の役割のどの分類が多かったですか。
役割:子ども・学生・家庭人・余暇人・市民・労働者・その他の役割

■過去・現在・未来の役割を書き出してわかること
  1. 現在 今自分がやっていること。
  2. 過去~現在 これまでの役割を振り返ることで、自分の価値観を知ることができる。
  3. 現在~未来 やりたいことがわかる。

わかったことから、未来へ目を向ける
   ・〇〇年後に、自分はどうなっていますか? どうなりたいですか?
   ・なりたい自分になるために、これからやるべきこと、必要なものは何ですか? 
    リストを作り、目指すゴールから逆算して、いつまでに何をやればよいのかを書きます。

さて、いかかでしたか?
自分が今まで積み上げてきた経験や、なりたい自分の姿がわかりましたか。



ところで、

やりたいことがわかっても、なぜかやる気が起きなくて……

という場合があります。たとえば、このような理由が挙げられます。

  • やりたいことが本心ではなかったり(誰かのためにやらなければならない)、やりたくてもできない原因があったり(金銭的、時間の問題、体や能力的)、誰かに止められている、などの理由によりやる気が起きない。

そのほかに、以下のような理由もあります。

  • やる気が起きない原因が、自分でもわからない。
  • やりたいことがわからない。
キャリアコンサルティングでは「やる気が起きない」「やりたいことがわからない」といった相談も受けつけています。

ライフキャリアが注目されている理由とライフキャリアを考えることのメリット

ライフキャリアが注目されている大きな理由に、「人生100年時代といわれ、働く人生が長くなった」ことがあります。

その他、経済社会環境にさまざまな変化が起きたためです。

ライフキャリアが注目される背景にあるさまざまな変化

○終身雇用制度の崩壊
同一企業で定年まで働き続けることの難しさ
○多様化
経済のグローバル化、テクノロジーの発展による価値観や働き方の変化
○少子高齢化
労働人口の減少による、働く世代への役割負担(高齢者の介護、子育てなど)の増加
○長寿化
 高齢者の職業人生の延長

これらは今まで、私たちが経験したことのないものです。

現在は、予測のつかない不透明な時代といわれています。
企業のプランに沿って定年まで働いていれば、年金生活で老後を過ごせるという時代ではなくなりました。そのため、さまざまな変化に対応できるように、一人ひとりが自律してキャリアを考えていくことが求められるようになったのです。

 
nanami
さまざまな変化の内容を知ると、
何となく大変そうで不安になるかもしれませんね。

しかし、デメリットと思われることばかりではありません。

かつては1つの企業で勤め終えることが一般的でしたが、現在は、働き方を自由に選べる時代です。転職や独立をすること、リモートワークやテレワークなど出社しない働き方もできます。あえて、正規雇用を避けて働くという方もいらっしゃいます。

今までは、企業や組織に任せていたキャリアを、これからは、自分でプランニングしていくということになるわけです。

もちろん、同一企業で働く選択肢もあります。

近年は、企業側のプランのみに沿ったキャリアではなく、社員のキャリアプランを理解し支援する企業が増えてきています。

ライフキャリアを考えることで得られるメリットとは?

ライフキャリアを考えるメリットは、自分らしい生き方がわかることと、経済社会の変化や働く期間の長期化に対応する力を備えることができることです。

なぜ、備えが必要なのかというと、変化を受け入れるためなのですね。
どんなに嫌っても、経済社会環境の変化や労働人生の長期化は避けられないからです。

そのため、「変化を受け入れる能力を備える」こと、「仕事中心の働き方から、家庭とのバランスを考える働き方にシフトする」ことをプランニングしていきましょうと言われているのです。

ライフキャリアを考えることは、人生を豊かな心で過ごしていくために大切なことだからです。

ライフキャリアをプランニングする

ライフキャリアを自分で考えるためには何をすればよいのか、についてお伝えします。
まず、以下の2つに取り組んでみましょう。

  1. 自分がどのような生き方をしたいのかを明確にする
  2. 将来自分に予想される出来事(ライフイベント)を想定して、必要なスキルを考える

どのような生き方をしたいのかを明確にする方法の1つとして、このコラムの中で紹介している【ライフキャリアを考える】ワーク1も参考にしてみてください。

ライフイベントとは、例えば「転勤、転職、結婚、出産、育児、介護」などです。

自分が目指したい未来がわかったならば、そこに向かって何をするべきかを具体的に書き表します。

・目指したいこと 
・そのためには「何を」「いつまでに」「どうするのか」

書くことで満足してしまわずに、行動に移すことが大切ですね。

【まとめ】ライフキャリアを考えることのメリット

  • 自分が目指すことがわかる
  • 目指したいことを成し遂げるために、今、やるべきことがわかる
  • 自分の役割や強みがわかる
  • 転職をする際に選択する基準が明確になる

なぜライフキャリア支援が求められているのか

「なぜ、ライフキャリアを支援するのか」についてお話しします。

ライフキャリアを考えるには、自分がどのような生き方をしたいのかを明確にすること。そして、将来自分に予想される出来事(ライフイベント)を想定して、必要なスキルを考えることをしていきます。

しかし、将来どうしたらよいのかわからない、という方もいらっしゃいます。
さまざまな変化に対応できないために悩んだり、不安になることもあるでしょう。

労働人生の長期化などの社会のさまざまな変化や、産業構造の急激な変化に一人で対応していくことはなかなか困難です。

ライフキャリア支援は、自分の人生を豊かに形成していただくために、自ら考え選択できるよう、第三者が情報を提供し、相談に乗り、助言やサポートをすることです。

ライフキャリア支援で行うこと

  • 自分の価値観(大切に思っていること)を探すお手伝い
  • 自己肯定感を高めるお手伝い
  • ライフイベントを想定して、キャリアプランを立てるお手伝い

上記のような支援のほか、ライフキャリアをプランニングする上でのさまざまご相談をお聞きし、ご相談者さまが「ご自身の力」 で乗りこえられる方法を一緒に考えていきます。

柔軟に対応できる心を育てる

現代は、変化が激しい時代です。
変化というものは、人にストレスを与えます。人間には、自分を守ろうとする一種の防衛本能があるためですね。

現代の働く女性は、仕事でも生活においてもたくさんの役割を抱えています。
価値観が変化する社会の中で、ストレスや悩みも増えているというのが実情でしょう。

そこで重要になってくることは、働くために必要なスキルの取得だけでなく、社会の変化や、今までの価値観が揺らぐような経験に遭っても柔軟に対応できる心なのです。

ストレスを感じているときには、一人で問題を抱え込まずに、何らかの援助を受けることがとても大切なことになってきます。

なぜならば、心に負担がかかりすぎてしまうと、体に不調を感じたりやる気が起きなくなってしまうからです。

職業選択や職業生活などのライフキャリアに関する相談を支援するのがキャリアコンサルタントであり、心のケアをする専門家に臨床心理士や心理カウンセラーなどがいます。

柔軟に対応できる心を育てるためには、「自分自身をよく知る」ことが必要です。
キャリアコンサルティングでは、自分の固定観念や、短所もよいところもたくさん見つけていきます。

 
nanami
何かにつまずいたとき、誰にも相談できなくて悩んでいるときには、私のようなフリーランスのキャリアコンサルタントもご相談をお受けしています。

以下に、ライフキャリアを支援している機関をご紹介します。

「キャリアコンサルティングを受けてみたいけれど、どんな感じなのかな?」と、気になるけれど何となく不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。
このような機関を利用して、カウンセリングの体験をしてみるのもよいかと思います。

ライフキャリア形成を支援する機関

無償でキャリアコンサルティングを受けることができます。

無償で相談ができる回数や対象条件などに違いがあります。
各機関にお問い合わせの上、訪問してください。

■ハローワーク(厚生労働省が運営)
・基本的には就職の相談に乗ることがメインですが、キャリアの相談なども行っています。
 *参考:厚生労働省サイト
■キャリア形成・学び直し支援センター (厚生労働省委託事業)
・在職者を対象にキャリア相談を行っています。
*参考:
サイト
■ジョブカフェ/正式名称:若年者のためのワンストップサービスセンター(都道府県主体の就職支援施設)
・原則15〜34歳までを対象にキャリア相談、職業紹介などを提供しています。
 *参考:サイト