【女性の生き方】人生の転機を乗り越える方法―シュロスバーグの理論から

私たちは、生活を維持していくために長い職業人生を歩んでいかなければなりませんね。

いつまでも子どもではいられないように、私たちの人生は変化し続けています。その中で、いく度かの転機が訪れます。

転機とは、別の状態に転じるきっかけとなる出来事です。
転機によって、状況や役割が全く変わってしまうことがあります。

女性の転機の例を挙げてみますね。
 留学・就職・転職・結婚・出産・子育て・引っ越し・離婚・学びなおし・退職・介護……。

転機は喜ばしいこともありますが、時には大きな不安をもたらします。
そのような事態に遭遇した際に、どのように転機を乗り越えたらよいのでしょうか?

転機は現状を変えるチャンスととらえて、働くことと生活のバランスがとれた人生を進んでいけるとよいですよね。

この記事では、アメリカの女性理論家ナンシー・K・シュロスバーグ(Nancy K. Schlossberg)の「転機を乗り越えるための4つのS」という理論から、人生の転機を乗り越える方法をお伝えします。



 
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シュロスバーグさんの理論から、転機や危機に遭ったときに何をすればよいのかがわかります。
シュロスバーグさんは、全米キャリア開発協会(NCDA)の元会長、メリーランド大学の名誉教授です。

女性の転機

女性の転機にはどのようなことがあるでしょう。
主な転機を再度、記載しておきます。

  • 高校や大学卒業後の初めての就職
  • 異動・転勤・転職
  • 結婚・出産・子育て
  • 離婚
  • 学びなおし
  • 退職
  • 介護

転機とは、分岐点、分かれ目です。

あなたの人生において、今までの状況や役割が変化していくことです。目に見える変化だけでなく、あなたの心の変化も含みます。

初めての就職先での新しい人間関係、結婚によって引っ越しをしたり働き方を変えたりなど、生活環境がガラッと変わることはストレスや不安を伴うものですね。

シュロスバーグは、転機や変化予測できないものであり、誰もが共通して遭遇する出来事でもなく人それぞれが独自の転機を経験しているといいます。

つまり、自分の転機は自分だけが経験していること。ですから、転機を乗り越える手段は人それぞれに違いがあります。

では、どうやって転機を乗り越えたらよいのかというと……。

自分の置かれている状況を見極めて受けとめ行動することと、支援を受けることです。
そのやり方をシュロスバーグの4S理論にそって、見ていきましょう。

転機を乗り越えるための方法―3つのステップ

 
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まずは、シュロスバーグさんが定義する転機(トランジション)についてお話しします。シュロスバーグさんは、トランジションをその人の人生上の出来事であると考えます。個人における独自の出来事という視点でとらえているのです。

トランジション(転機)には、2つの視点があります。

1つは、トランジションを発達論的な視点から見た理論です。
成人の年代や発達段階には、共通した「ある発達課題や移行期がある」というものです。
「トランジションは、発達していく段階でみんなに共通するいくつかの課題があり、いくつかの課題と課題の間には、小さな変化(移行期)がある」という考えです。

もう1つは、シュロスバーグのように「個人における独自の出来事」という視点でとらえる理論です。
「トランジションは、起きる時期も内容もみんなそれぞれに違う」というものですね。

どちらが正解でどちらが間違いというものではありません。理論家によって、考え方がそれぞれ違うからです。
シュロスバーグの4Sは、転機を乗り越えるための理論の中の1つです。

シュロスバーグ以外の理論家の転機を乗り越えるための理論は、別の機会にお伝えしていきますね。


 
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では、転機を乗り越える3つのステップを見ていきましょう。
今、転機に見舞われている方は、ステップの中の【Q】にそってワークしてみてくださいね。

シュロスバーグの転機を乗り越えるためのスリーステップ

1.変化を見定める
2.リソース(資源)を点検する
3.受けとめる

1.転機(変化)を見定める【自分の立ち位置を確認する】

転機には3つの種類があります。

  1. 予期していた転機(イベント)
    ・就職、引っ越しなど、ある程度予期できたこと。
  2. 予期していなかった転機(イベント)
    ・天災や病気など、予期せずに起こったこと。
  3. 期待していたものが起こらなかった転機(ノンイベント)
    ・昇進すると思っていたが昇進できなかった、子どもができないなど予期していたことが起きなかったこと。

転機により影響を受けること

転機に遭うと、以下の4つの変化が起きます。1つだけの場合もあれば、複数の変化が起きる場合もあります。

  1. 役割
  2. 人間関係
  3. 日常生活
  4. 考え方

A 転機による変化が、あなたにとって「プラス」であれば、その良さを継続して生かしていきましょう。

B 転機による変化が、あなたにとって「マイナス」であったり「危機」であれば、シュロスバーグの4Sにそって転機を乗り越えていきます。

2.リソース(資源)を点検する【4Sで点検】

転機を乗り越えるためには、4つのリソース(資源)が必要です。

転機を乗り越えるための4S

4Sのは、「Situation、Self、Support、Strategies」の4つの頭文字を取ったものです。
4つの資源を点検し、自分に足りないものを見極めていきます。

  1. Situation(状況)
  2. Self(自己)
  3. Support(支援)
  4. Strategies(戦略)

具体的な4Sの点検法は以下のとおりです。

Situation(状況)

転機が自分にとってどのような意味があるのかを判断します。

点検項目 見極めること 自分の現状を記入する
原因 このような状況がおきた原因は何か。何を選択したことで生じたのか。  

予期

現在の状況は社会的に予測することが可能であったか。突然起こったことなのか。  
期間 一時的なことなのか、永続的なことなのか。  
体験 同じような転機を経験したことがあるか。その時の気持ちや状態はどうか。  
ストレス 現在の問題以外に抱えているストレスはあるのか。  
認知 状況をどの様に捉え、受け止めているか。好機なのか、危機なのか。  

Self(自己)

転機を乗り越えるために、自分の感情を理解します。

点検項目 見極めること 自分の現状を記入する
仕事の重要性 仕事はどの程度重要か。どの部分(地位、給与等)に興味があるのか。  
仕事と他のバランス 仕事、家庭、趣味、地域のバランスをどう考えるか。  
変化への対応 変化への対応はどのようにするのか。立ち向かうのか、受容するのか。  

自信

自分に対する自信はあるか。新しいことに挑戦しようとしているか。  
人生の意義 人生にどのような意義を持っているか。  

Support(支援)

転機を乗り越えるために、支援してくれる人がいるのか、どのように支援してもらえるのかを考えます。

点検項目 見極めること 自分の現状を記入する
良い人間関係 必要とする援助を他人、友人、家族から得られるか。  
励まし 自分の成功を期待し励ましてくれる人はいるか。  
情報 仕事を探す方法、企業や雇用に関する情報などを収集できるか。  
照会 解雇された時の経済的支援制度等に関する知識や情報の提供者はいるか。  
キーパーソン 重要な情報を提供してくれる人はいるか。その人からの支援は望めるか。  
実質的援助 経済的支援など実質的な援助を望めるか。  

Strategies(戦略)

状況・自己・支援を確認、分析した後に、転機を乗り越えるために有効な手段は何かを検討します。

点検項目 見極めること 自分の現状を記入する
状況を変える対応 職探し、新たなトレーニングを受ける等を実行しているか。  
認知・意味を変える対応 転機の持つ意味をプラス思考に変えようと試みているか。  
ストレスを解消する対応 リラクゼーションや運動等でストレス解消を図っているか。  

参考資料:「JILPT 資料シリーズNO.165 職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査」2016年3月/独立行政法人 労働政策研究・研修機構

3.受けとめ、対処する【4Sで転機を乗り越える】

 
nanami
4つのSを点検することにより自分のリソース(資源)について、足りているもの、不足しているものが把握できます。

4S「Situation(状況)、Self(自己)、Support(支援)、Strategies(支援)」を点検したならば、まずは、その結果を受けとめることが大切です。

次に、転機を乗り越えるために、不足しているリソース(資源)を増やしていきます。リソースを充足するには何が必要でどう動けばよいのかを考え行動します

対策を練ったら、行動しましょう。【いつまでに】【何を】【どうする】と目標を立てて動きます。

転換期を支援する3つのシステム


シュロスバーグは、4つのS「Situation(状況)、Self(自己)、Support(支援)、Strategies(支援)」で転機を乗り越えることを示しました。

しかし、自分だけで転機を乗り越えるのは大変ですね。

そこで、シュロスバーグは4Sに加えて、転換期を支援する3つのシステムを利用することで、転換期に生じる様々な問題を解決できるとしています。

以下の3つの支援システムを積極的に利用して、転機に伴う問題を解決していきます。

3つの支援システム

  1. キャリア転換を支援する公的機関や民間団体
    ハローワーク、職業紹介所、人材ビジネスなどの活用
  2. 転換期をうまく乗り越えるための経済的資源、物理的条件の存在
    預金、不動産、保険、親との同居など
  3. 転換期を支援し支えてくれる人々、人間関係の存在
    キャリアコンサルタント、親、友人、親戚など

シュロスバーグの4S理論と転換期を支援する3つのシステムで、転機を乗り越えていく方法をお伝えしてきました。

でも、転機の渦中にいるときには、冷静に物事を判断できない場合もありますね。

過去を振り返ったり、これから何をするべきかを一人で考えるのが難しいときには、私たちキャリアコンサルタントがご相談にのることもできます。

一人で悩まずに、支援制度を利用したり、誰かに相談したりして転機を乗り越えていきましょう。